春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
復讐…?

紗羅さんが、私に?

その邪魔を諏訪くんがしている?


「…復讐?彼女が君に何をしたと言うのさ」


フク、シュウ。

その単語が、私の中をぐるぐると回っている。

たったの一単語。でも、とても深くて重い言葉。


私は紗羅さんに何もしていないのに、どうして憎まれているのだろう、とあの頃は思っていたけれど。

やっぱり、私が忘れている過去に、真実があるのだ。

私は、彼女を深く傷つけたのだ。…きっと。


紗羅さんは眉間に皺を寄せた諏訪くんを鼻で笑った。


「心外だわ、あなたからそんなことを言われるなんて。何もかも全部知っていて、古織柚羽の味方をしているんでしょ?」


「知らないね。君がくだらない事ばかり考えてるってことは知ってるけど」


諏訪くんに言い返された紗羅さんは、苦虫を嚙み潰したような顔をした。

それを見た総長の夏樹さんは紗羅さんを背に庇うと、凄まじい形相で諏訪くんを睨みつける。
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