春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
噎せ返るような夏は瞬く間に過ぎ去り、季節は秋の終わりを迎えた。

本格的な冬が来るのはまだ先だが、規則的な日々を送っていれば、あっという間に時は過ぎる。


(また、か…)


この高校に転校してきてから、二か月が経った。

転校初日、聡美という素敵な友達が出来て、これから充実した学校生活を送れると思っていたのに、予期せぬことが起きた。

そのせいで神苑の人たちに目をつけられた私は、今日もこうして嫌がらせを受けているのだが。


「上履きを隠すとか、小学生みたい。あたしも隠してやろうかしら」


今日は何をされるのだろうと思いながら、登校した矢先で。

案の定上履きを隠された私は、怒っている聡美を宥めながら、思案に暮れていた。

たかが上履きだが、ないと困る。靴下が汚れてしまうし、お手洗いに行くのも気が引ける。


「やめときなよ、女って面倒くさいから。そんなことに時間を使うなんて勿体ない」


「あたしも女なんだけど。篠宮からしたら、これはくだらない事なのかもしれないけど、あたしは仕返ししてやりたいのよ」
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