春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
下駄箱の前であれやこれやと文句を言っている聡美と私の前に現れたりとは、呆れたように笑った。
一緒に登校してきたのか、すぐ後ろには諏訪くんも居て。


「いいねぇ、仕返し。永瀬チャン、校庭に落とし穴とか作っちゃう?」


「それいいわ!総長と姫が二人で仲良しこよし出来るサイズの穴を掘りたい!」


何を言っているんだ、この二人は。
内心呆れつつも、ふたりらしい考えには思わず笑ってしまう。

そんな私たちを余所に、昇降口にあるごみ箱から私の上履きを拾ってきたりとは、切り刻まれた上履きを見てため息を吐いた。


「穴を掘るなんて、体力の無駄。それよりも、上履きのお金を請求した方がいいんじゃない?」


「璃叶は真面目だなぁ」


真面目な顔で言うりととは反対に、諏訪くんは彼らにどう仕返ししようかと考えているらしい。楽しそうにしている。

職員室か事務室かは分からないが、スリッパを借りたい。

場所を聞こうと口を開いたが、りとは哀れな姿になった私の上履きに釘付けで、唇を動かしても気づいてもらえない。

肩を叩こうと手を伸ばせば、諏訪くんに呼び止められた。
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