春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
放課後の教室。ほどんどの生徒が下校しているため、室内には私たち三人しかいない。

諏訪くんの携帯に十数回目の電話をかけたりとは、またも連絡がつかなかったのか、苛立ちを露わにしている。


「どこだよ、晏吏」


そう言い、舌打ちをすると八つ当たりをするように椅子を蹴った。


「やっぱり、何かあったんじゃないの?」


「何かって?」


「神苑の奴らから、何かされた…とか」


「あり得ない」


りとは即座に否定した。
理由は、神苑の総長が諏訪くんに関わらないから、らしい。族から追放して以来、存在していないかのように扱っているという。


「仮に、下っ端のやつらから何かされているとして、十人でかかっても晏吏は倒せない」


驚いた聡美は素っ頓狂な声を上げた。


「諏訪ってそんなに強いの!?」


「…強いもなにも、晏吏は元幹部。喧嘩専門と言っても過言じゃなかったし。その気になれば、副総長も他の幹部二人も倒せるよ」


今や暴力反対と言っている諏訪くんは、そんな人だったのか。
でも暴走族に入っていたのだから、そうであっても不思議ではないよね。
< 128 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop