春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
南校舎にはいなかった、と聡美に連絡を入れた私は、諏訪くんが居そうな場所を考えた。でも、保健室と屋上以外に、彼が居そうな場所は思いつかなくて。

どうするべきかと考えていたその時、男子生徒が二人、非常出口から入ってきた。


「あー、マジでスッキリした。まさか殴らせてくれるとは思わなかったからさぁ」


「さすがの死神も、20人以上の男とアキラさんとシンさんが相手じゃあ、手も足も出なかったかー」


男たちの声で、私は身体を強張らせた。

今、死神と言った？


「いい気味だったよなぁ。これでスワも、この学校から消えるだろ」


「それなぁ」


（っ…！）


何度も耳を疑ったけれど、男子生徒の手には血が付着している。あんなの、殴った証拠じゃないか。

居ても立っても居られなくなった私は、男子生徒の元へと走り寄った。


「（ねぇ、今の話、本当なんですか…！？）」


いきなり現れるなり、ひたすらに口をパクパクとさせている私を見て、男子生徒は困惑していた。だが、もう一人の男子生徒は私を知っているのか、私を見た途端顔を歪めている。
< 131 / 381 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop