春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「…ごめんね、柚羽チャン」


呆然と立ち尽くしている私へと、謝罪の言葉が落ちる。

どうして謝るの? 欲しい言葉はそれじゃないのに。


「(なにが…?どうして謝るの…?)」


諏訪くんは視界がはっきりしていないのか、私が言っている言葉が分からないようだった。

小首を傾げ、曖昧な笑みを浮かべている。


「…朝、さ」


もう一度唇を動かそうかと思ったけれど、諏訪くんが言葉を紡ぎ始めたから止めた。

諏訪くんの前にしゃがみ込み、話の続きを待つ。


「あのあと、神苑の溜まり場に…屋上に、行ったんだ」


あの後…それは朝、私たちと会った後?

首を傾げた私に、諏訪くんは「今朝だよ」と言った。


「仕返し、してやろうと思って」


いつの間にか、あちらで話していた聡美とりとが此方を向いて、諏訪くんの話を聞いていた。

諏訪くんは一度私たちの顔を見た後、渇いた笑みをこぼした。

ごめんね、と言っているかのようだ。


「…本気、だよ?でも、まさか、あそこに幹部二人が居たとは思わなくってさぁ…」
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