春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
二人とも、まさか諏訪くんがそんなことをしに行っていたとは思わなかったのか、彼を凝視している。私も同じように信じられないという目で見てしまった。


「返り討ちに遭っちゃって…」


そう言った諏訪くんの表情は真剣そのもので、返す言葉も思いつかないまま、揺蕩う風に身を任せてしまう。

枯れ葉が舞い落ちる寂しい音や、風が吹き荒れる音に支配された空間を打ち破ったのはりとだった。

殴る勢いで諏訪くんの胸倉を掴むと、凄まじい目つきで睨んでいる。


「アンタは馬鹿だ!!!」


その眼差しも、声も、姿も、全てが真っすぐで。


「どうして、いつも、いつも、一人でやろうとするんだよっ…!?」


ぶっきらぼうなりとからは想像もつかない情熱的な姿に、思わず見惚れてしまった。


「…なら、皆で行くの?皆で行って、どうするのさ…?やられるのはひとりでいいんだから、一人で行けば……」


「どうして分からないんだよ!」


りとは声を荒げると、諏訪くんの頬を平手打ちした。
辺りに渇いた音が響き渡った。


「頼ることを、覚えろよ。仲間がいることを…アンタはひとりじゃないってことを、分かってよ」


「りと…」


「次、ひとりで何かしに行ったら、容赦しないから」
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