春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「(さ、聡美!)」


私は微動だにしない聡美の腕を引っ張った。
確かに紫さんは思わず目を奪われてしまうくらいに綺麗な人だけれど。


「はっ…ご、ごめんなさい!」


我に返った聡美は、赤くなった顔を隠すように手に持っていた紙袋を差し出した。

それはここに来る前に寄ったコンビニエンスストアで買った箱菓子だ。

予定では、諏訪くんへの見舞いの品だったような…。


「つ、つまらないものですがっ…!」


紫さんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ。聡美が差し出した紙袋を受け取ると、隣に立つりとに手渡す。


「ありがとうございます。後でみんなでいただきましょうか、璃叶」


「そうだね」


そう言うと、紫さんは私たちを店内のソファに案内してくれた。そこには体中に湿布や包帯を巻いている諏訪くんも居て。


「やあ、柚羽チャンに永瀬チャン」


見た目は酷いが、顔色はそう悪くはなかった。
思ったよりも元気そうだし、いつものようにヘラリと笑っている。
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