春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

もれ出づる月の

時は夏を彩る緑が地に舞い落ちる、寂しい季節。
『ANIMUS』に通い始めてから、半月ほど経った頃のこと。


「かーれはーがぁー」


「なにその歌」


「え、もしかして璃叶、この歌知らないの?」


「知らないけど」


放課後、私たちは璃叶の家であり、紫さんが経営している『ANIMUS』に居た。

最初は諏訪くんのお見舞いで来ていたが、今では私たちの溜まり場のような場所になっている。

この店は夜に営業している喫茶店で、営業時間外である放課後は自由に寛いで構わないと紫さんが言ってくれたのだ。


「ダメだなぁ、最近の若者は」


「…アンタ同じ歳でしょ。何言ってんの」


最近は神苑の人たちから何もされていないこともあり、平和な時間を過ごしていた。とはいえ、一般生徒たちからの嫌がらせは無くなっていない。

今日は提出しようとしたノートがビリビリに裂かれていた。璃叶の助けもあり、彼のノートを拝借して別の紙に写させてもらったから、何とか間に合ったのだが。


「いやいや、最近の若者は駄目だよー。特に夜な夜なバイクを走らせている人間とかね!」
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