春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

そう思ってはいても、この想いが声となり音となって、彼女の鼓膜を揺らす日は永遠に来ないのだろう。

彼女の瞳を見ればわかる。
どうやったら蹴落とすことが出来るのか。それしか頭にない今の姉には、もう、私の言葉は。


「いい?柚羽。くれぐれも、あたしの邪魔をしないで。あたしは御堂組に…あんたに復讐をするんだから」


ほら、届かない。
刃物のような言葉で、私を追い詰めていく。

ミドウグミってなに? 私に復讐?

私は姉にも何かしたの?


「あんたから何もかもを奪ってあげるわ。あんたが他人の人生を奪ったようにね!」


「(っ…!)」


やっぱり、私がヒトゴロシだってことは、紗羅さんの戯言じゃなかったんだ。被害妄想なんかじゃなかったんだ。紛れもない真実だったんだ。

だって、そうでなければ。

姉が泣きながら言うはずがない。


「すべてのはじまりはあんたよ。あんたが生まれたから、あんなことになった。アンタさえいなければいいのよ!!!」


「(っ…―――)」


すべてのはじまりが、私。

私が生まれたから、彼女は。紗羅さんは。
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