春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
(……もう、嫌い)


私は、私のことが大嫌いだ。あんなに想ってくれていた友達のことを、こんな風に思うなんて最低だ。

一人になると余計なことまで考えてしまうの。

たくさんの人を傷つけておきながら、記憶を喪っている女なんて消えてしまえばいい。

諏訪くんも璃叶も聡美も、本当はそう思っているんじゃないかって。
信じられなくなってきて、私は。


「ねー、君。ひとり?」


その声で顔を上げれば、軽そうな男が私を見下ろしていた。同時に、ここが繁華街の中であることも理解した。


「ねーねー聞いてる?」


再び声をかけてきた男に、私は頷いた。

男は嬉しそうに笑うと、私の肩を抱き寄せてきた。

もう、どうなったっていいや。


「じゃあ俺と遊ぼうか。安くてイイトコあるんだよねぇ~」


私は男に手を引かれながら歩き出した。

これから何をするのか。それは、ホテル街に入った瞬間に理解した。
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