春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「この件で非があるのは僕だ。二人はいつものように笑っていてください。必要なものを持ったら、学校に行ってお勉強です」
いつもの有無を言わせない笑みに、私もりとも口を閉ざした。
りとだけでなく紫さんもこの件には何の関係もないのに。
全ての元凶は私なのに、どうして二人はこんなにも優しいのだろう。
紫さんは優しく微笑むと、私の家の玄関へと歩き出した。その後を追うように、りとも足を進める。
「……古織?」
どうしてなの。どうして私は人に迷惑を掛けてばかりなの。これは私の問題なのに。二人は何の関係もないのに。
動き出せずに立ち止まったままでいる私の元へとりとが戻ってきた。
「…馬鹿だね」
「(なに、が…?)」
「アンタだよ。どうせ関係ないのに…とか思っているんでしょ?」
押し黙った私を見て、りとはふっと笑った。
「いいじゃん、関係なくたって。こっちが勝手にしていることなんだし、アンタは笑っていればいいよ」
そう言うと、私の手を掴んで歩き出した。