春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
* * *



「なんか、色々あったね」


満天の星空の下、私とりとは温かいココアを片手にベランダに出ていた。


「(…そうだね)」


家を飛び出した翌日、必要な物を取りに戻った私を待ち受けていたのは、姉にありもしないことを言われて人が変わったように怒っている母で。

紫さんに連れ出された私は、りとと学校に行った後、こうして『ANIMUS』に身を置いている。

紫さんが「家に戻りたいと思うまでここに居てください」と言ってくれたのだ。


「…こんなことを言うのはどうかと思うんだけどさ、アンタの姉さんってヤバいんじゃない?」


優しい二人に甘えるわけにはいかない。甘えてはいけない。甘えにも程がある。そう思っていたのだけれど、母に言葉が届かないと知った私は、現実に耐えきれずに涙をこぼしてしまった。


「(分からないよ。もう、分からない。何があってこんなことになってしまったのか…考えるだけで、頭の中が混乱する)」
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