春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

めぐり逢ひて

「おはようございます。よく眠れましたか?」


ここで生活し始めてから、何日目かの朝。

紫さんの綺麗な笑顔に出迎えられた私は、コクコクと頷いて「おはようございます」の意味を込めて頭を下げた。


「それはよかった。もうすぐ焼けますから、支度をしてきてください」


その言葉に頷けば、紫さんはまた笑う。

コンロの火を一瞥すると、白い湯気が立ち昇るマグカップを傾け、テレビのリモコンを片手にソファへと歩み寄っていった。


「あ、柚羽さん」


背を向けようとした瞬間に、ふと何かを思い出したような声が上がる。


「もうすぐクリスマスですね」


何を言われるのかと思えば、クリスマス?

首を傾げれば、ふふっと微笑まれた。


「何か欲しいものはないのですか?」


「(…いやいや!欲しいものって…)」


聞いてどうするのだろう。

手を左右にブンブンと振れば、紫さんはクスクスと笑いながらテーブルの上にある雑誌を広げている。


「ご馳走とケーキを用意して、パーティーにしましょう。勿論ツリーも飾って。あ、天辺の星は璃叶に飾らせないと拗ねてしまうので、それ以外の飾り付けになりますが」
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