春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

なんだそれは。
クリスマスだからご馳走を作ってケーキを焼くのは分かるが、ここは…りとが育った家はツリーも飾るのか。

私の家にもあったけれど、中学生になる前までしか飾られていなかった気がする。

理由は確か、サンタさんの正体を知ってしまったからだと思う。

聖なる夜に現れる幻の煙突からサンタさんが現れて、プレゼントを置いていくと信じて疑わなかった私は、ある年のクリスマスに両親がプレゼントを持っていたのを見て仰天したんだっけ。


昔のことを懐かしく思う反面、あのりとがクリスマスツリーに飾るお星様を持ってムキになっている姿を想像していたら、頬が緩々と綻んでいくのを感じた。

そんな私を見て、紫さんは優しく微笑んでいた。


「ふふ、意外でしたか?璃叶はああ見えて子供っぽいのですよ。苦手なニンジンが出ると、僕の皿にコッソリ除けたり…」


「なに朝から許可なく人の話をしてるの、紫さん」


紫さんが楽しそうに話し始めた時、不機嫌なオーラを漂わせているりとが現れた。
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