春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
* * *



「―――で、どうなの?あの篠宮とひとつ屋根の下のライフは。何か甘いアクシデントとか起きた?篠宮の部屋を漁ったりした?」


登校して早々、教室に入るなり私の元へとやって来た聡美が、あれやこれやと尋ねてくる。

ひとつ屋根の下のライフはともかく、甘いアクシデントって何だろう。何かの乙女ゲームのイベントでもあるまいし。


「(え、え?)」


「もー、柚羽ったら!篠宮は英語のことしか頭にない勉強馬鹿とはいえ、年頃の男子じゃない!何も起きてないの!?」


何を言っているんだ、聡美は。
年頃の男子の家に居候をすると何が起きるというのか。
そんな少女漫画やドラマみたいな事が起きるわけがないでしょう、と訴えるように睨めば、「ウフフ」とよく分からない笑みを浮かべている。


「永瀬チャン、りとがそんなことをするわけないじゃんー」


「分からないわよ。見かけによらず、むっつりしてるかもしれないじゃない?」


イチゴオレのパックジュースを片手に、窓辺に寄りかかりながら話に加わっていた諏訪くんはくすくすと笑った。
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