春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「絶対にないよ」


「何でそう言い切れるのよ」


「りとだから」


聡美は「意味不明だわ」と口を尖らせた。
それでも諏訪くんは笑っている。面白がるように、楽しそうに。


「…目の前に可愛い女の子が居たら、襲いたくなるのが男ってもんじゃないの?」


「あはは。まぁ、そうだね。でも、りとはしないと思うなぁ」


「…風呂上がりの柚羽が目の前に居ても?」


「僕だったら怪しいけど、それでもりとはないと思うなぁ」


怪しいのか、とツッコミたくなったが止めた。
りとは単に女の子に興味がないから、とかいう理由ではなさそうだ。

諏訪くんは何もかもを知っていそうだったけれど、それ以上は聞けなかった。聞いてはいけない気がしたのだ。

そうしたら、何かが変わってしまう気がして。


「ささ、この話はお終いっ!」


諏訪くんは半ば強制的にこの話を終わらせると、職員室に寄ってからやって来たりとの元へと歩いて行った。
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