春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
今日の空はいつになく青くない。それどころか、日常の色を全く感じさせない灰色だ。線のように所々薄く引かれている雲は空よりもより一層濃い色をしていて、泣き出したい時の人の心の色に似ているんじゃないかと思った。

校舎の外へと身を投じた私は、今にも雨を降らせそうな空と地面を交互に見ては、駅へと向かって足を動かしていた。

世界は広い。当たり前で誰もが理解っていることだけれど、こうして通学路を歩くだけで私はそう思ってしまう。

すれ違った人たち。隣で信号の色が変わるのを待っている人。横断歩道の向かい側で携帯を弄っている人。光を放ったり音を出している機械。動いていることが当たり前となっている、文明の利器たち。

この空間だけでも、知らないことがたくさんある。


名前と顔、ある程度のことを知って関わっている人たちもそうだ。

その人たちのことを知っているようで、知らなかったりするし。

自分以外の人間の全てを知ることなんて不可能だから、何を言っているんだという感じだけれど。
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