春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「――――柚羽、柚羽?」
不意に呼ばれた自分の名に、意識が目まぐるしい速さで覚醒した。
まだ見慣れない天井と、母の驚いた顔が視界いっぱいに映る。
「怖い夢でも見たの?大丈夫?」
その問いに、私は瞬時に首を横に振った。
母の指先が涙の痕をそっと拭う。
どうやら私は夢の中だけでなく、現(うつつ)でも泣いてしまっていたらしい。
とはいえ、どうして泣いていたのかは分からない。
曖昧な世界から抜け出したと同時に、あちらに記憶を置いてきてしまったのだろう。
「(だい、じょうぶ…)」
母はいつも通りに私の唇から言葉を読み取ると、「早く支度をしていらっしゃいね」と言い、部屋を出て行った。
壁の時計とお気に入りのポスターを交互に見つめ、ベットの外へと出た。
夢は、怖くはなかった。
曖昧な記憶を呼び覚ましながら、クローゼットの把手に手を掛ける。
(……琥珀色…)
琥珀色の瞳の青年が、私の名前を呼んでいた。
そんな夢を、見ていた気がする。
不意に呼ばれた自分の名に、意識が目まぐるしい速さで覚醒した。
まだ見慣れない天井と、母の驚いた顔が視界いっぱいに映る。
「怖い夢でも見たの?大丈夫?」
その問いに、私は瞬時に首を横に振った。
母の指先が涙の痕をそっと拭う。
どうやら私は夢の中だけでなく、現(うつつ)でも泣いてしまっていたらしい。
とはいえ、どうして泣いていたのかは分からない。
曖昧な世界から抜け出したと同時に、あちらに記憶を置いてきてしまったのだろう。
「(だい、じょうぶ…)」
母はいつも通りに私の唇から言葉を読み取ると、「早く支度をしていらっしゃいね」と言い、部屋を出て行った。
壁の時計とお気に入りのポスターを交互に見つめ、ベットの外へと出た。
夢は、怖くはなかった。
曖昧な記憶を呼び覚ましながら、クローゼットの把手に手を掛ける。
(……琥珀色…)
琥珀色の瞳の青年が、私の名前を呼んでいた。
そんな夢を、見ていた気がする。