春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
わが身ひとつは
どれくらいの間、そうしていたのか分からない。
こうして男の人に抱きしめられたことなんて、今までなかったはずなのに。
どうしてか、彼がくれる温もりは目頭が熱くなるほど安心する。
何故なのだろうと思案に暮れているうちに、随分と長い間彼の腕の中にいた。
「……もう大丈夫だよ。あいつらが柚羽に危害を加えることは、もう二度とない」
彼の声が、吐息が、首筋に掛かってくすぐったい。
神苑の人たちに放っていた冷たい声とは違って、私へと贈られる声はとても艶やかで、優しくて、温かった。
「(い、づき…さん…?)」
音のない声で、彼の名前を呼んでみた。
結果は分かっている。私の唇から出た言葉は、空気を駆け巡ることなく消えているのだから、彼の鼓膜を揺らすことは出来ない。
「………ゆず、は」
気のせいでは、ない。私を抱きしめている維月さんの腕が、身体が小刻みに震えている。
腕の中に閉じ込められている今、彼がどんな表情をしているのかが分からない。
分からない。けれど、きっと、彼は。
こうして男の人に抱きしめられたことなんて、今までなかったはずなのに。
どうしてか、彼がくれる温もりは目頭が熱くなるほど安心する。
何故なのだろうと思案に暮れているうちに、随分と長い間彼の腕の中にいた。
「……もう大丈夫だよ。あいつらが柚羽に危害を加えることは、もう二度とない」
彼の声が、吐息が、首筋に掛かってくすぐったい。
神苑の人たちに放っていた冷たい声とは違って、私へと贈られる声はとても艶やかで、優しくて、温かった。
「(い、づき…さん…?)」
音のない声で、彼の名前を呼んでみた。
結果は分かっている。私の唇から出た言葉は、空気を駆け巡ることなく消えているのだから、彼の鼓膜を揺らすことは出来ない。
「………ゆず、は」
気のせいでは、ない。私を抱きしめている維月さんの腕が、身体が小刻みに震えている。
腕の中に閉じ込められている今、彼がどんな表情をしているのかが分からない。
分からない。けれど、きっと、彼は。