春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
それから諏訪くんは、私と維月さんが付き合い始めてからのことを話してくれた。
中々素直になれなかった私とは反対に、維月さんはいつだって真っ直ぐだったこと。
よく勝手に怒り出していた私を、維月さんは嬉しそうに笑いながら宥めていたこと。
ごく普通の恋人と何も変わらなかったこと。
聞けば聞くほど、私は維月さんに会いたくなった。
「二人が付き合い始めてから、数か月が経った頃。ある男が、柚羽チャンに一目で恋に落ちた」
そう言うと、諏訪くんは空になったマグカップに飲み物を注いだ。
その声と表情に緊張が走っているように思えたのは、私の気のせいではないはずだ。
「その男は柚羽チャンのお姉さんの恋人でね。お姉さんと付き合っているのに、妹に恋をした」
姉の恋人が、私に恋を?
信じ難い話だが、それが真実なら姉が私を恨んでいる理由になる。
どうして私だけでなく御堂組にも復讐をしたいのかが解らないけれど。
「ある日、その男は柚羽チャンを誘拐して、監禁した。無理矢理手籠めにしようとしたんだ。でも、維月さんに見つかった。怒った維月さんは、組の力を使って男を表の世界から消したんだ」
中々素直になれなかった私とは反対に、維月さんはいつだって真っ直ぐだったこと。
よく勝手に怒り出していた私を、維月さんは嬉しそうに笑いながら宥めていたこと。
ごく普通の恋人と何も変わらなかったこと。
聞けば聞くほど、私は維月さんに会いたくなった。
「二人が付き合い始めてから、数か月が経った頃。ある男が、柚羽チャンに一目で恋に落ちた」
そう言うと、諏訪くんは空になったマグカップに飲み物を注いだ。
その声と表情に緊張が走っているように思えたのは、私の気のせいではないはずだ。
「その男は柚羽チャンのお姉さんの恋人でね。お姉さんと付き合っているのに、妹に恋をした」
姉の恋人が、私に恋を?
信じ難い話だが、それが真実なら姉が私を恨んでいる理由になる。
どうして私だけでなく御堂組にも復讐をしたいのかが解らないけれど。
「ある日、その男は柚羽チャンを誘拐して、監禁した。無理矢理手籠めにしようとしたんだ。でも、維月さんに見つかった。怒った維月さんは、組の力を使って男を表の世界から消したんだ」