春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
何を、言っているのよ。

殺人鬼の弟だから、何だと言うの?

諏訪くんは諏訪くんじゃない。

ふわふわとしていて何を考えているのか分からないし、すぐにフラフラとどこかに行っちゃうし、口を開けば冗談ばかり言っているけれど、諏訪くんはいつだって助けてくれた。

笑って吹っ飛ばしてくれた、大事な友達だよ。

そんなことを聞かないでよ、諏訪くん。


「(ばか)」


「え…」


「(諏訪くんの、馬鹿)」


「……えっと、」


何で分かってくれないの。いつもなら何となく読み取って、笑って頷いてくれたのに。


「(馬鹿って言ってるの!)」


そう口をパクパクと動かせば、諏訪くんは大口を開けて固まった。

いきなり立ち上がるなり、肩でゼエゼエと息をしている私を見て、紫さんは吹き出している。


「あの、紫さん…?」


紫さんは笑いながら、諏訪くんの肩をポンと叩いた。


「今の言葉は、僕でも分かりましたよ」


「いや、あの、そう言われましても」
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