春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「(何がしたいの!?私のことが嫌いで憎いんでしょうっ…!?友達は関係ないじゃないっ!!!)」


こんな時でさえ、私の声は出てくれない。

それでも私の声は…言葉は存在しているのだと、紫さんは言ってくれたから。

だからこうして、怖くて仕方がなかった姉に言葉をぶつけることが出来ている。

相も変わらず音になっていないけれど、姉に面と向かって言っているのは大きな進歩だ。


「(お姉ちゃんはいつからそんな人になってしまったの!?私が事故に遭ってから?私に復讐をするため?私が不幸になれば元に戻るの?私が――)」


「何をしてくれてるのよっ!?」


「(っ…!)」


あっと思った時にはもう、頬に痛みが奔っていた。

姉は私に打たれたところを抑えながら、般若のような形相で私を殴り返したのだ。


「私の美しい顔を…よくも叩いてくれたわね」


しまった、と思う。でも、後の祭りだ。既に過ぎ去ったことだから、どうしようもないし、どうにかしたいとも思わない。
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