春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
頭を働かせようと上半身を起こせば、腹部がジワリと痛んだ。
思わず顔を顰めれば、諏訪くんが私の元へと駆け寄り、体を起こすのを手伝ってくる。
「…ごめんね、柚羽チャン。維月さんの命令とはいえ、君を殴ってしまった」
ああ、そういうことか。だから私は今ここに居るのだ。
維月との思い出の地である屋上に彼と行った私は、そこで二度目のサヨナラをされたのだ。
大事だとか、好きだとか言っておきながら、迎えに来てくれなかった彼は、諏訪くんに私のことを頼んで。
ようやく会えたと思ったら、今度は嘘を吐いて、私の元から去った。
私を想ってのことだったと分かっている。でも、何一つ話してくれないまま行くなんてあんまりだ。
維月はいつもそうだった。
私のため、人のために、自分の心を殺している。
今もこの瞬間も。私が転校して、彼の存在を忘れて生きていた時でさえも。
私は握りしめていた拳をほどき、諏訪くんを見上げた。
「…知ってたの?諏訪くんは」
「………」
どうして気がつかなかったんだろう。
当たり前のように私を助けてくれていた彼が、維月と繋がっていたということに。
思わず顔を顰めれば、諏訪くんが私の元へと駆け寄り、体を起こすのを手伝ってくる。
「…ごめんね、柚羽チャン。維月さんの命令とはいえ、君を殴ってしまった」
ああ、そういうことか。だから私は今ここに居るのだ。
維月との思い出の地である屋上に彼と行った私は、そこで二度目のサヨナラをされたのだ。
大事だとか、好きだとか言っておきながら、迎えに来てくれなかった彼は、諏訪くんに私のことを頼んで。
ようやく会えたと思ったら、今度は嘘を吐いて、私の元から去った。
私を想ってのことだったと分かっている。でも、何一つ話してくれないまま行くなんてあんまりだ。
維月はいつもそうだった。
私のため、人のために、自分の心を殺している。
今もこの瞬間も。私が転校して、彼の存在を忘れて生きていた時でさえも。
私は握りしめていた拳をほどき、諏訪くんを見上げた。
「…知ってたの?諏訪くんは」
「………」
どうして気がつかなかったんだろう。
当たり前のように私を助けてくれていた彼が、維月と繋がっていたということに。