春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

しばしとどめむ

また、だ。


「っ―――死神!?」


また、貴方が現れた。


「諏訪晏吏っ…!?」


「―――おいっ、総長に連絡を―――」


―――死神。そう呼ばれている男は、形のよい唇を綻ばせた。

開かれた扉に体を預け、眩い夕陽を背に佇んでいる。


「―――裏切者め!!よくも夏樹さんの名前を呼び捨てにっ…」


彼・諏訪晏吏が現れた途端、男たちは私を放り出して、諏訪へと殴り掛かりに行った。

四方八方から攻撃しているというのに、誰の拳も当たっていない。

しなやかに身を躱しながら、楽しそうに笑っている。


「僕、平和主義者だからさぁ、喧嘩したくないんだけどー」


「黙れ!族から追放された裏切者が!!」


「あはは。僕に黙ってほしかったら、憲法でも改正してきて?―――裏切者は口を開くべからず、とかね」


諏訪はそう言うと、殴りかかってきた男の脚を蹴り、残りの男たちも同様に蹴りだけで片付けてしまった。

すべて、指一本触れさせることなく。
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