春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

花の色は



「来るな!!!」


彼は開口一番に叫んだ。

その場に居る誰もが息を飲んで、状況を忘れて彼を凝視する。

彼は片手で数えきれないほどの数の男たちに取り囲まれていた。

ここまで連れて来てくれたりとの手を離し、彼の元へと足を進める。


あと数歩で辿り着くという時、豪快な笑い声が響き渡った。

ゆっくりと背後を振り向けば、大柄な男が目を三日月のようにして笑っていた。

その眼差しはただ一人、維月だけに注がれている。


「こんなところに、小娘が一人…。お前が感情を露わにするとはな。その小娘が大事と見える」


「黙れ」


「黙るのはお前の方だ、御堂の若頭よ。自分が置かれている状況を分かっていないのか?」


男がそう言った瞬間、動きを止めていた男たちが一斉に銃を構えた。

銃口は全て維月へと向けられている。


「…柚羽には手を出すな」


男は笑みを深めた。


「さて、どうするか。個人的な理由で崇瀬組に乗り込んできた愚か者の女だからな。お前と一緒に片付けてやろう」
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