春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「長い間、ひとりにしてしまってごめんね、維月。だというのに、遠くから私を守っていてくれてありが――」
「待って、柚羽」
何か間違ったことを言ってしまったのかと、不安が全身を駆け巡る。
「あの、維月…?」
維月は何度か瞬きをすると、私から視線を外し、斎場を振り返った。
「――それは、俺じゃない」
言っていることの意味がまるで分からなかった私は首を傾げた。
「どういうこと?維月は諏訪くんとりとにお願いをしていたんじゃなかったの?」
「…俺が柚羽を見守り手助けをするよう命じたのは、晏吏だけだ。あの男の子には何も言っていない。それどころか、俺は向坂紫が死んだあの日に、初めてあの子の存在を知った」
「それじゃあ、りとは…」
りとは崇瀬組の組長に脅されたから、私の傍に居たはず。でも、それはいつから?
最初からのはずがない。だって、私が自分の姉のことを話したのは、もっと後のことだもの。
りとが諏訪くんや聡美と一緒に私の傍に居るようになったのは、もっと、もっと後。