春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「…何も、知ろうとしなくていいから。知ろうとも思わないで。出来れば、もう二度とあいつらに関わらないで」


「(どうして…?)」


「…関わりたいの?」


私は瞬時に首を振った。

関わりたくないよ、暴走族になんて、もう二度と関わりたくない。

でも、それは叶わない気がする。
私が“私を知らない私”である限り、彼らはずっと付き纏ってくる気がした。

木々に囲まれた小さな小道を抜けて、駅のすぐ近くにある大通りに出る。

そこが見覚えのある場所であることに酷く安心した。

横断歩道を前にした私たちは、信号を待つために立ち止まった。話すなら、今がチャンスだ。


「(関わりたくなくても、向こうが関わろうとするんじゃないかな)」


いつもより、一際大きく唇を動かした。
彼に、伝わるように。


「…どうしてそう思ったの?」


「(…紗羅さんが、私のことが嫌いだと言っていたから。私は何もしていないのに。いや、していないと思っているだけで、忘れているだけなのかも)」
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