春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「(あの、)」


「なに?」


「(どうして助けてくれたんですか?諏訪くんとどういう関係なんですか?あなたも、暴走族の人…?)」


彼はやや考える素振りを見せると、徐に口を開いた。


「…俺は暴走族なんて入ってない。無関係。晏吏とは中学からの付き合いだから」


私の唇から言葉を読み取って、返事をくれる。

こんな風に、面と向かって人と言葉を交わすことが出来るのは、今まで両親しかいなかったからとても嬉しかった。


「…ごめん。晏吏がアンタを助けた理由は、今はまだ話せない。でも、いつかちゃんと、ちゃんと話すから」


「(…?)」


「だから、今は大人しく守られていて」


「(守られていてって…)」


それじゃあまるで、私がこの先も神苑の人たちから、何かされるって言っているようなものじゃない。

私は暴走族なんて知らないのに。

そういった人たちとは無縁の世界で生きているのに。

生きていたいのに、どうして?

否応なしに関わらなければならないというの?
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