春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「て、めっ……!!!」


諏訪くんに殴られ、吹っ飛んだ男は顔を真っ赤にして叫んだ。

それを見て、男子生徒に暴行を加えていた男が、殴る手を止めて呆然としている。


「……くっだらない」


地を這うような声に、神苑の男の肩がビクリと揺れた。

諏訪くんはそう吐き捨てると、ボロボロにされた男子生徒の元へと歩み寄った。


「っし、シニガミっっ」


つい数十秒前まで蹴ったり殴ったりしていた男は、近づいてくる諏訪くんから距離を取るように後退るが、その背後には腕を組んでいるりとが立っていた。


「ひいっっ…!!」


綺麗な顔が、彫刻品のように美しい笑顔を飾る。

りとは小首を傾げると、足元の男の顔面に蹴りを食らわせた。

男は為す術もなく、後方へと倒れ込む。


「蹴られる気持ちは、どう?」


「っ…、お前、」


「お望みなら殴ろうか?―――晏吏がね」


「え、僕~?」


ケラケラと笑う諏訪くんと、綺麗に笑うりと。

よく分からない組み合わせを目の前にして、聡美の顔が強張った。
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