春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「ーーとにかく、あのスワアンリとは関わっちゃダメ。あの階段には近づいちゃダメってことは、覚えて」
「(は、はい…!)」
「それから、出来れば神苑の連中にも近づかないこと。美形が多いからって、身体の関係を持とうとする馬鹿な女が多いけど、真似なんかしちゃダメだよ」
「(はい…!)」
返事の代わりに何度も何度も頷けば、聡美はホッとしたような笑みを浮かべた。
「…よかった、分かってくれて。実は私と仲が良かった子たちはみんな、神苑の連中に心を奪われて…」
「(…友達、が?)」
「一度関係を持った後、捨てられて…それで…」
壊れたお人形のように、家に閉じこもっているの。と。
聡美は今にも泣きそうな顔で、そう言った。
私は音を持たない無機質な言葉を伝えるわけにはいかず、届かないことを分かっていながらも、唇を動かした。
きっと、届かない。でも、画面の文字じゃなくて、私の声で届けたいの。