春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
あの金髪の人のことは、話さない方がいい気がした。
ただの直感だけれど。


「（…えっと、聞いてみたくなっただけなの）」


自分でも分かるくらいに、不自然な言い方をしてしまった。

りとは訝しげな顔をしていたが、慌てて笑みを作って目を逸らせば、心を手で掴まれるような感覚はなくなった。


「…そう」


これ以上この話をするのはやめよう、という意味を込めて何度も頷く。

察してくれたのかは分からないが、りとは聞いてこなかった。

授業終了を告げる鐘が鳴り響く。
じゃあ、と言ったりとは教室の外へと出て行った。

それを見て小さく息を吐けば、聡美が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「大丈夫？柚羽」


私は口角を上げた。


「（だいじょうぶだよ）」


「ならいいんだけど…。神苑の連中に何か言われたり、されたりしたら、ちゃんと言ってよ？」


聡美の優しい言葉に胸が温かくなった。

ありがとう、と唇を動かし、再び視線を窓の外へと向ければ、今日も変わらず青い空が広がっていた。
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