春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「ゆーずはっ、一緒に帰ろ?」


放課後。帰り支度をしている私の元へと、既に鞄を肩に掛けている聡美がやって来る。

私は頷き、慌てて鞄を手に教室を出た。


「…やっぱり、ヒソヒソしてるわね」


廊下へと身を投じた私たちを迎えたのは、学年で最も目立つ女子のグループ。
気のせいだと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。



「(…気のせいじゃ、ないみたい)」


先月体育館倉庫で起きた神苑の人たちとの一件以来、やたらと視線を感じたり、影で何かを言われているような気がしていたのだ。

初めのうちは気のせいだと思っていたものの、私の顔を見ては口を開いている姿を見たら、真実なのだと認めざるを得ない。


行こう、と聡美が目配せをしてくる。
それに私は頷き、ギュッと手のひらを握り締め、一歩踏み出したのだが。

行く手を阻むように目の前に現れたのは、リーダー格の女の子。


「あなた、例の古織さんよね?」
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