春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
「(例の?どういう意味ですか)」


声を持たない私を目の前にして、彼女はフッと鼻を鳴らした。

私を彼女たちから守るように、聡美が私を背に庇う。

それを見た彼女はやれやれとため息を吐くと、私の目の前まで歩み寄って来る。


「あなた、神苑の姫に怪我をさせたんですって?」


「(あれは―――)」


「転校してきた理由は、彼女に復讐をするためなんですってね。姫の紗羅さん、泣いていたわよ?」


さらに、グループの輪の中からもう一人、大柄な女子生徒が出てくる。


「“人殺し”なんでしょ?古織さんは」


それを聞いたリーダー格の女の子は、「あらぁ」と声を上げると、私との距離をさらに詰めた。


「神苑の幹部を寝取った、とも聞いたけど。おとなしそうな顔して、か弱そうな雰囲気してて、中々やるのねぇ」


「ちょっと!どこでそんな話を聞いたのか知らないけど、柚羽はそんなことをするような子じゃないんだから」
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