春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
『――…どうしてあなたはいつも、こんな場所にひとりでいるんですか?ここの生徒じゃないでしょう?』
『さぁ、どうしてだろう?俺自身もよくわからないんだ』
『わからないのにいるんですか?』
『うん。…変な人だなって思う?』
『いいえ、思いません』
『…そっか』
『…あの』
『ん?』
『明日もここにいますか?』
『…どうだと思う?』
『いると思います』
『…どうしてそう思ったの?』
『いつもここにいるから。いつも一人で、ここから街の景色を見ながら、寂しそうな顔をしているから…』
『………』
『あの、』
『…なに?』
『明日、ここに来てもいいですか?』
『…お好きにどうぞ。別にここは俺の場所じゃないから、許可を求める必要はないよ』
『じゃあ、好きにしますね。私は古織柚羽と言います。あなたの名前は何ですか?』
『俺は―――――』