異世界トランスファ
センリは私を地下牢へ連れて行った。

階段を降りると、鉄でできた太い柱が何本も立っていて、鬱蒼としている感じだった。

少しカビ臭い。



コツコツコツ・・

という足跡を聞きつけギンは牢から覗き込む。


「おい!遅いぞ!こっちは時間との勝負なんだぞ!!」


「今行く」


そう答えたのはセンリ。


「センリ・・」


その声にギンもピンときた様だ。

センリは医師を中に入れ、ナギを診させた。


「う・・」


「これは・・酷い・・」


医師はすぐに応急処置を始める。


「すぐに手術をせねば、命があぶない」


「では、そうしてくれ」


とセンリは静かに言った。


「センリ、てめええ!!」


隣の部屋からギンが叫ぶ。


太い鉄格子で隔離してあり、身動きは取れなかった。


「ギン!!」


「え・・」



聞き覚えのある私の声を聞きギンは驚いた。



「ヒオリ!?」



私は兵士に拘束されながらも必死にギンを呼んだ。

ゆっくりと階段を歩かされて、遠い距離からギンを見ることしか出来ない。


「ギン、絶対助けるね!だから・・無茶な事しちゃ駄目だよ!!」


「ヒオリ・・」


「私がなんとかするから!!だから大人しくしててね!!」


「なんだよ・・それ!!」


ギンは悔しさがこみ上げてきたのか、壁を思いっきり叩いた。


私は二人を見て思った。


もとの時代に帰りたいんじゃないんだ。

今すぐあの家に帰りたいんだ。



バシッ!

そう思うと余計に憎しみや悲しみがこみ上げて来て、思わず兵士にエルボーをかました。


「うっ・・」


「離して!!ギンとナギの所へ行かせて!!」


「できません・・くうぅ」


兵士はとても痛がっている。

残念だが、謝る余裕なんて私にはなかった。


「行かせて!!!」


「ヒオリ。静かにしろ」


センリが近くで諭す様に言う。
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