異世界トランスファ
ほんの数分の出来事なのに、とてつもなく長く感じる。

「ヒオリ、呼吸を落ち着かせよ」


「で、出来な・・」


初めての事でどうしたらいいのか全くわからない。


「一旦息を止めろ、腹式呼吸は出来るか」


「む・・理っ・・っ・・はあっ」



トキワ様は私を寝かせ、落ち着かせようとしてくれた。

シズクちゃんが薬湯を手に慌てて戻ってくる。



「粉末の漢方をお水に溶かしました!これで!」


「ああ、でかした」


それを受け取り私に渡してくれようとしたが、とてもじゃないけど飲める状態じゃなかった。


「心を落ち着かせろ。息をとめろ!」


「うっ・・はあっ・・」



ぎゅっ

と私は王の腕を掴んだ。

とにかく何かにすがりたい。

それくらい辛かった。



「ではこうする・・・ヒオリ」


「ト、トキワ様っ!はわわっ」


シズクは顔を真っ赤にして目を逸らす。


なぜなら王は私の唇を塞いだ。自らの唇で。



「・っ・・・っ・・!!」


もちろん無理矢理だ。

ジタバタもがく。

死んじゃう!!!死んじゃうよおおおっ!!



「はっ・・・これを飲め、いや飲ませる」


そして王は薬湯を口に含んで私に移した。


「んっ・・くっ・・・んぐっ」


流れ込む水。

顎を水が伝い零れる。



「んっ・・はっ・・はぁ・・はぁ・・」


「ゆっくり、ゆっくりと息をしろ」


「はー・・はー・・はぁ・・っ・・はー」



なんとか窮地を脱したらしい。

必死すぎてよくわからないけど。

そのまま従った。



すると少し呼吸が楽になった、気がする。



「はぁ・・・はぁ・・トキワ様・・」


「よし、良くなってきた。このまま静かにしろ」


「はい・・はぁ・・・はー」



シズクちゃんは私を見て涙目を浮かべていた。

申し訳ない。

こんな醜態をさらして。

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