異世界トランスファ
「明日、城に向かう」


「ん?うん・・」


「だから、今日だけ」


「今日だけ?」


「俺だけのヒオリでいてくれ」


「え・・・///」


耳元でそう囁いた声に心が鷲掴みされた様になった。

そんな声を出されたら嬉しくて、でも辛くて泣きそうになる。

切ない気持ちが溢れてくる。


「いつも、傍にいるじゃん・・」


と強がって言ってみる。


「皆も一緒にな。だから、今日は俺だけの日なの」


ぎゅっ

と力強く抱きしめられた。


「お前の顔、可愛すぎて誰にも見せたくなかったんだよ。
ナギにも絶対に見せたくねえ」


「はい!?」



突然どうしたの!?

とんでもなく甘々対応///

好きな人にそんな事言われたら吐血しそうなんですけど。ぐはっ。



でも今の私はその言葉を素直に嬉しいと感じた。

完全に恋してるじゃん。

駄目だ。本能が。湧き上がる熱い想いが私を動かす。


「ギン・・」

「なんだ?」





ちゅっ。

私はギンを見上げ、不意をつくように唇を奪った。

奪いたかった。


「・・・」


時間が止まった様に固まっているギン。


「あ・・えと・・」


でもこんな事したことないからその後何を言えばいいのかわからない。

下手くそだ。


「好き・・だよ。だから・・その・・えっとぉ・・・」


「おい、今こっちみんな」


「え!?何で!?」


私はしどろもどろだっていうのに、いつの間にかギンは自分の顔を手で押さえてる。



「嬉しすぎて泣きそう」


「は・・何それ」


思わず吹き出した。


「ぷふっ・・ふふふ・・ギン面白すぎ」


「はあ!?お前俺の気持ちわかんねーの!?」


「わかるよ。だから、こっち見てよ。私も無理してるんだからね」


お互い耳まで真っ赤だ。


思春期到来か。

いや再来か?
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