異世界トランスファ
「ナギ、あのね・・」

「待った。やっぱいい」


とナギは私の口を手で覆った。

そして先に口を開いた。


「・・センリや、トキワじゃないだけ・・マシ」


「へ?」


「さっきのギンの話が万が一、本当の事だったとしたら・・
遠くに行くわけじゃないんだったら・・俺にもまだチャンスはある」



な、なんでそこはポジティブなの!?


でもナギの手は小刻みに震えてた。

悔しさなの?悲しみなの?武者震いなの?


「俺は大人ぶってたけど・・やっぱまだガキだ。誰にも勝てない」


「そ、そんなことないよ、ナギは出会った頃よりも今はずっと逞しいし頼れるし」


「そんなお世辞はいい」


「お世辞じゃないよ」


「だから、俺はこれからもっと勉強もするし、もっとトレーニングもするし、ギンを越える」


それを聞いてギンは苦笑してる。


「そういうとこがガキなんだよ」


「るせえ!努力して何が悪いんだよ」


こくこく。

と頷く私はナギに賛成です。

今ナギは成長しようと決意してるんだから。


「言いたい事もちゃんと言うし、これから大人になっていくから・・だから、俺はまだ諦めない」


「ナギ・・」


私の目をしっかりと見つめて言ってくれた。

そう言ってくれるのは嬉しいけど、ナギにはきっとまだ沢山出会いがあるハズ。

私なんかより、凄くイイ子が沢山いるよ。

でも今は何を言っても無理そう。

誰に似たんだか頑固だから。



「それにギンが先におっさんになっても、俺はまだピチピチだかんな」


「ぶはっ」



そういう事言う!?

爆笑しそうになった。

いや、すでに吹いたけどね。




「ナギ、てめ・・」


すくっと背筋を伸ばしてナギはギンを睨みつける。


「今はいい気になってるけどな。横からかっさらってやる。せいぜい怯えてな、馬鹿ギン」


「・・マジ可愛くねえ」



言葉ではそう言ってるけど、ギンはにやける顔を手で隠したみたいだ。

半分嬉しそうな感じにも取れる。

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