異世界トランスファ
駄目だ。しっかりしなくちゃ。

しっかりしないといけないのに。

ボロボロと勝手に涙がこぼれる。

ギンは芯の通った声を放つ。

「大事な話をしたいんです。渡してください」


「大事な話?」


「はい」


顔は真剣そのもの。

トキワ様は見透かす様に目を細めている。



駄目、ギンはそれを言ってはいけない。

ギンから言ったらトキワ様を怒らせてしまうかもしれない。

私は遮るように口を開いた。


「トキワ様。後でお部屋に行きます。だからギンと話をさせてください」


「!」


私がそう言うと、ギンは目つきを変えた。

驚きで見開いたというべきか。



「・・わかった。待っている」


「はい・・失礼します」


トキワ様は優しく腕を解いてくれた。


とぼとぼとギンの前を歩く。涙をぬぐいながら。

ギンはしかめた顔をしながら私の後をついてきた。


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