異世界トランスファ
息が苦しい。


入るなりギンが私の唇を自分の唇で塞いだから。


「ちょ・・やめ・・んっ」


両手を壁に押し付けられ身動きも取れない。


「嫌っ!!ギン!!」


「何でだ!」


目と目で見つめ合う。

とんでもなくグシャグシャな顔に違いない。

こんな顔見せたくないのに。

ギンも困った顔してる。


「も、ヤダ・・辛い」


「ヒオリ」


限界がきた。そして泣きじゃくった。


「何でアサギさんなのおぉ」


「馬鹿違う!あれは無理やりされたんだ!あいつ酔ってたし!俺からじゃねえ!」


「わかってる!でも全部ヤダ!キスも、他の人に手を振るギンも全部嫌だあぁ」


幼稚園児かと思うほど泣きじゃくった。

お酒の酔いがそうさせた。

嫉妬が爆発した。

そして自己嫌悪に陥る。

自分だってセンリとトキワ様と仲良く笑っていたクセに。なんて汚い女なんだ。

自分のそういうとこ本当に嫌い。消えてなくなればいいのに。



「ごめん、ヒオリ・・ごめんて・・傍にいてやれば良かったな」


「嫌い!全部ヤダ、ヤダヤダ・・んっ・・ぅ~~~」


ギンは何度も唇をついばむ。それはとても荒く熱い。


「俺だって・・嫌だ。お前がトキワのそばに居るの。
他の男がお前を抱きしめてるの嫌だ」


力強く抱きしめられる。


「お前が好きなのは誰だ?」


と、聞かれ


ぎゅーーーー!!!

と私は抱きしめ返した。


「ムカつくアイドル気取り野郎ですううう!!」


「ぐええっ!苦しい!俺のことかそれ!」


あんた以外に誰がいるんだ。


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