異世界トランスファ

コンコンコン

と優しいノックが聞こえ、私達は服を正した。


「ヒオリ、いるか？」


センリの声だ。


「あ・・はい」


きっとトキワ様が呼んでるんだ。

私が立ち上がると、ギンは私の腕を掴んで眉を困らせた。


「行くな」


「でも・・ちゃんと言わなきゃ。私から言わないとギンが危ない目にあうし」


「お前もあぶねえ」


ドキン


真剣に見つめてくる。

本気で心配してくれてるんだ。


「大丈夫・・きっとわかってくれる」


「・・・」



私がドアを開けると、センリはホッとしたような顔をしていた。

私は中にいるギンが見えない様にすぐにドアを閉めた。



「センリ？」


「トキワ様からの伝言で、今日はもうこのまま休むって」


「え？」


「体調が良くないみたいで」


「トキワ様が！？」


そうだったの！？

元気そうに見えたのに。


「何か話があったんだろう？明日にするから今日は自分の部屋で休むようにって言ってたよ」


「あ・・うん、わかった」


肩を撫で下ろす。


よかった。

ちょっとだけ心の準備が欲しかったから。

安心した私を見て、センリはあるものに目を止めた。



「ヒオリ・・」


ドキン


「え？」


胸元についた赤いアザにセンリは指をつけた。


「これは・・どういう事？」

「えっ？あ！？何！？」



や、やばいやばいやばい


やばすぎる。ギンがつけたんだ。


「あ・・虫さされ・・かな」


「・・・。」



センリは呆れたようにため息をついた。


「そういうことにしておくけど・・・」


センリは私の頬を両手で持ち上げる。


「ちょっと、妬けちゃうな」


「へ？」


目の前に色気づいた瞳がある。

まつげがバサバサの瞳が。

顔がとても近い。あと数センチでキスしてしまいそう。



「ななな！？」


「フフ、冗談だよ。おやすみ」


ぽんぽんと頭を撫で、センリはもと来た方向へ戻っていった。


「な・・なんだったの・・・」


私は撫でられた頭をさすりながら自分の部屋に戻った。