異世界トランスファ
ツカサさんは昨日から食欲が出ずにほとんど食べてないらしい。

きっと思い悩みすぎてるんだ。

この一年間でようやく時空転送装置にこぎつけられたんだもんね。


「諦めてたんだ。ツムギ達は懸命になってくれたけど、女性だし旅だってしたこともないし。
まさか南の国から東の国へなんて思わなかっただろうしね」


「遠いですもんね。それにツムギさんてお役目もあったんじゃないですか?」


「ああ。ツムギとクレハは南の国の城に半年間いかなくてはならないし、他の国を探すにもあまり知識もないし、ツテもない」


「そうですよね」


だからこそ今回あの3人は向かったのだろう。

ツカサさんの為に。


「今はどっちですか?ツカサさんは」


「なんとも。帰る方法があればもちろん帰りたい。なければ潔く諦めるよ」


「・・・・」



そう・・だよね。

それしか言えないよ。

私だってそうだ。

もし、目の前に家や東京の景色が見えたのなら、迷わず帰りたいって思うに違いない。


皆を置いて。

でも。


「少しでも、ここの人達と一緒にいたいと思う事はありますか?」


「え?・・・」


と言ったきりだんまりしたツカサさん。


「辛いな。俺もヒオリちゃんも」


「え」


ツカサさんはお見通しだ。

それは私が思っている事だから。

ギンやセンリやナギがいてくれたから平和に暮らしていけてるから。

甘え以外の何物でもない。

だけど、本心は。



離れたくないんだ。
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