異世界トランスファ
「カグラさん」

「ああん?」


突然ギンがカサネさんの前に出た。


「俺からの仕事の依頼なんですよ。カサネは関係ありません。俺が此処に連れて来てもらっただけだから」


「貴様はカサネのなんだ」


「ダーリ・・」
「ただの友人です」


しょぼん。

カサネしょぼん。


「ふん。連れて来て貰っただ?とんだ軟な男だな。依頼があるなら一人で来い」


「それは、カサネがどうしてもと言うんで一緒に。貴方の顔が見たくなったからだと思いますけど」


「・・・なんだと?」


ビキビキとカグラの額にまた筋が浮き出た。


「知らん。わしには息子はいない。帰れ」


「・・・」


ザッ。

と土の音がしたかと思うと、ギンは膝をついた。

そしてそのままお辞儀をした。


「お願いします。俺に力を貸して下さい。どうしてもコウガの力が必要なんです。報酬はもちろん払います」


「・・・・」



私は遠くで涙ぐんでいた。だって、久しぶりに見るギンで。

懐かしさと、でもやっぱり他人ぽく見えるのと、色んな感情が溢れてきたから。

ギンが土下座みたいな事してるなんて信じられないし。



「どうした?」


横にいたナユタが私を見て首を傾げている。


「・・・なんでも・・ない」


溢れてくる涙を必死に拭う。

今すぐに抱き着きたい衝動にかられた。

でもきっと出来ない。

あんな別れ方だったんだから。

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