異世界トランスファ
「ギ・・」


名前を呼びたかったけど、それはすぐに遮られた。


そして目の前の人と、目が合った。


「う・・ぅう・・」

「し・・静かにしてろ」

「ぅ~~~~」


ギンは泣いてる私の背中を優しく撫でくれた。


「な・・んで。ギン・・」

「馬鹿、バレるだろうが」

「だって・・だ・・っ」


大きな手が私の口を塞ぐ。


「まさかお前がここにいるなんて思わなかったし・・変な状況になっちまったし」

「わ、私だって・・」


胸が苦しい。

だって、ギンが私と会話してくれてる。


「まさか、城飛び出したんじゃねえだろうな」

「だ、誰の・・せいで・・グス」

「プ・・俺か」


笑った。

ようやくギンが笑ってくれた。

死ぬほど嬉しいどうしよう。


私は全力でギンを抱きしめた。

今までの仕返しの分も含めて。

きっとギンの胸元は涙でびしょびしょだ。



布団の中、私達はヒソヒソ声で


「苦しいって・・」

「嫌・・もう・・離れるの嫌だ」

「ヒオリ・・」

「お願い・・嫌なの・・駄目なの」

「クッ・・抑え利かなくなるっての。折角出て行ったのに」

「駄目~~~っ」


しがみついて離さない私をギンはもう一度抱きしめると、何度も何度もキスを降らせてくれた。

慰めるみたいに。

私が泣き止むまで。




私はもう必死で必死で、ずっと

『好き』

って言い続けてた。


想いをぶつけたくて仕方なかった。

届いて欲しかった。
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