異世界トランスファ
「ヒオリ!!!」

「・・・ぇ!?」


奥からセンリの声がして、ドアの方に顔を向けた。


「え?え?」


よろけながら部屋に入ってきたのは、もう一人のセンリだった。

殴られたのか、顔には大きな傷を負っていた。


「そいつは・・ちが・・」


ズンッ

と鈍い音がセンリの身体を貫いた。


「ひっ・・」


男は持っていたナイフでセンリの腹部を貫いた。


「あ・・ぁぁ・・」


もう恐怖で訳がわからなくて。

私は脱力した。

どういう事?

センリが二人?

ていうか、何が起きてる?

ギンとセンリがこの人に殺される・・?


「いやっ!!そんなの嫌だ!!!」



状況は全然わからない。

わかりたくもないけど。

でも私は本能的にこの男を拒絶した。

こいつはセンリじゃない。

ただの恐ろしい殺人者だ。


「静かにしろ」


ぴた。

と私の喉にナイフが突きつけられた。


「・・・っ」


「どのみちバレると思ってたから、無駄口を叩くつもりはないと思っていたんだけど」


「だ・・れ・・?」

「センリ。だよ」


どす黒い笑みを浮かべ、男はベランダの扉を開けた。


「アイツはただの俺の眼。監視カメラみたいなもんだ。世の中を見る為、そしてお前を見る為のな」


バサッ!!!

と大きな羽音が聞こえると、目の前に巨大なカラスが現れた。

そのカラスの背中に私を担いだまま男は乗ると、上空に飛ぶように促した。


そして、私はそのままこの男の手によって城から攫われてしまった。

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