クール彼氏とツンデレ彼女


間違いなく、勘違いしてるやつだ。



「井下、ちょっと待って。この人は私がナンパ男に絡まれてたから助けてくれたの」



私は慌てて説明する。


井下はなにか考えたのち、視線を落とした。



「……悪かった」



睨むことはやめたものの、どこか納得していないようだった。



だけど、彼は微笑んだ。



「島谷さん、大切にされてるね。井下君も素直な人だ」



名前……は、私たちがお互いに呼んだのを聞いたんだよね。



まったく知らない人にこう言われるのは、なんだか恥ずかしい。



「そうだ、名前……」


「それはまた会ったときに教えるよ。じゃあね」



話をそらそうと思ってそう切り出したのに、かわされた。



彼は手を振り、人混みの中に消えていった。



「俺あいつ嫌い」



また素直に……



「まあまあ。ほら、花火始まるよ」



すると、タイミングよく花火が上がった。



……また会ったとき、か。


井下には絶対言えないけど、あのイケメンはもう一度拝みたいな、なんてね。

< 33 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop