クール彼氏とツンデレ彼女
間違いなく、勘違いしてるやつだ。
「井下、ちょっと待って。この人は私がナンパ男に絡まれてたから助けてくれたの」
私は慌てて説明する。
井下はなにか考えたのち、視線を落とした。
「……悪かった」
睨むことはやめたものの、どこか納得していないようだった。
だけど、彼は微笑んだ。
「島谷さん、大切にされてるね。井下君も素直な人だ」
名前……は、私たちがお互いに呼んだのを聞いたんだよね。
まったく知らない人にこう言われるのは、なんだか恥ずかしい。
「そうだ、名前……」
「それはまた会ったときに教えるよ。じゃあね」
話をそらそうと思ってそう切り出したのに、かわされた。
彼は手を振り、人混みの中に消えていった。
「俺あいつ嫌い」
また素直に……
「まあまあ。ほら、花火始まるよ」
すると、タイミングよく花火が上がった。
……また会ったとき、か。
井下には絶対言えないけど、あのイケメンはもう一度拝みたいな、なんてね。