ヒロインの条件
『俺、告白したんだぞ』
「ごめん」
『おい、ごめんって! それが返事か? 電話で言うなよ!』
スマホの向こうで千葉の声が動揺している。私は慌てて「ちがうちがう、あのー千葉のこと忘れてないよって言いたくて」と取り繕った。
『俺のこと、本当に考えてる?』
「考えてるって」
『あーもう』
スマホの向こうで、大きなため息が聞こえた。
『取り合えず会うぞ。週末暇?』
「暇だよ」
『じゃあデートする』
「でーと!?」
私は驚いて叫んでしまった。この私がデートだなんて!
『そんくらいしないと、野中は本気で考えないだろ。何もしないで待ってるなんて嫌だ』
「う、うん」
佐伯さんのことを聞こうとしたら、千葉とデートをすることになってしまった。
『じゃあまた連絡する。行きたいところ考えといて』
「わかった……」
頷きながらも、佐伯さんになんて言おうと悩み出す。きっと怒るにちがいない。
人生で初めてのモテキが到来して、頭が混乱している。もしかしたらやっぱり騙されれてるのかな? ほら、Youtubeで流されちゃうとか……。
「いや、たとえそうであっても、楽しむって決めたんでしょ? このシチュエーションを楽しまなくちゃ」
私は力強く頭を振った。