ヒロインの条件
電気銃で射抜かれて、心臓がびっくりしている。佐伯さんのプライベートルームだなんて、どうしよう緊張する。
部屋は10畳程度で、中央にダブルベッドが置いてある。その頭上にカーテンのひかれた窓があったが、佐伯さんはダブルベッドの上に片膝をつくと、手を伸ばしてのそのカーテンを開ける。真っ暗だった部屋に外の明かりが入ってきて、その明るさにホッとした。
再び白いシャツが浮かび上がる真っ青な世界で、佐伯さんが「こっち」と手招きする。
ああ、どうしよう、どうしよう。ドキドキして死んじゃいそう。
佐伯さんはベッドを乗り越えて奥へ行くと、そのすぐ傍にある一人掛け用のソファから、ガウンのようなものを手にとり、腰紐を引っ張って取った。それからベッドを二つに割るように一本置く。
「お互いはみ出さないようにすればいい」
私はごくんと唾を飲み込んで「はいっ」とまるで試合をするような勢いで返事をした。
「戦うみたいだ」
佐伯さんはクスッと笑って、ベッドに横になる。私も意を決してベッドの上にそっと乗ると「お布団どうぞ」と佐伯さんサイドに上掛けを押しやった。
「いいよ、俺」
「でも風邪ひいちゃいますよ」
「それはお互い様だし」
佐伯さんはそう言って「ま、じゃあ上布団も半分こ」と私の上にバサーッと布団を掛けた。
佐伯さんの匂いに包まれ、布団をかぶるとすごく空気が濃厚になるような気がする。佐伯さんの方を向き、身を縮こまらせて目の前にあるバスローブの紐を眺める。これが境界線。