ヒロインの条件
「じゃあ、直接伺っちゃいますけど」
山本さんが愛嬌のある声で口を開いた。「塩見さんとどういう関係なんですか?」
そこに日替わりパスタが到着して、「わあおいしそう」と坂上さんが声を上げる。質問は宙に浮いたまま、私は坂上さんの一挙手一同に注目した。
坂上さんがパスタを一口食べて、ニコッと笑う。
「中高の同級生……まあ腐れ縁ね」
「そうなんですか」
ホッとした声が山本さんから漏れた。
「でも、一時期付き合ってたかも」
さらっと坂上さんはそう言った。
ああやだ。不安が形を成してしまった。
「一時期って、もうそれは……?」
恐る恐る山本さんが尋ねると、坂上さんは「終わってるってー」と笑い飛ばした。
「だいたい、ちゃんと付き合ってたのかもわかんないなあ。思春期ってほら、男女でそういうことしたくてたまんないでしょ? 流されてお互いそうなってなんとなく一緒にいて……って感じ」
『そういうこと』って、そういうことだよね……。
泣きたい。泣きたいよ。どうしよう、今すぐ泣きたい。
「まあ、昔の話……今はいい思い出。もともとほんと、何考えてんのかわかんない男だったし、自分のことしか興味ないっていうか、身勝手っていうか、私とそういう関係の間も、来るもの拒まずで女の子なかせてたし、いいのは顔と頭だけで、恋人にするには最低だよ!」